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(2025.06.20)(book)オルクセン王国史 3巻

『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』3巻/樽見 京一郎


3巻もとても面白かった!

3巻でエルフィンド王国に対する戦争での戦闘が始まった訳ですが、2巻を丸々使って万全の準備の様子を描いていたので、実際の戦争が始まった後は予定調和と言うか、段取りの結実を眺めるだけ、みたいな無双が展開されるものと思っていました。

でも、そうではなかった。いい意味で予想を裏切られました。

まず、戦争が始まった瞬間(もしくは開戦前)から始まっている財務方の立ち振る舞いが熱い。彼らは戦争が終わった後の疲弊した国を如何に盛り立てるのかを考え、未来を見据えた戦いをしています。

オルクセン国内においては、国債を使った戦後の国の購買力の増強。戦争が終わって内需が減少しているところに利子を付けた現金を渡して、インフレに注意しながら内需を刺激。そして、それだけでは補えない部分は敗戦国となったエルフィンドを自国の領土にしてしまえば、そこには経済的に肥沃な大地が広がっている、という考え方が素晴らしい。

その為に軍票を使ってエルフィンドの中にオルクセンの経済圏を作っておき、エルフィンドの体力・心情を削り過ぎないように、現地聴衆は計画的に行い、占領後も治安維持に努める。終戦後にオルクセンの領土、オルクセン王国の一部になる事を予想し、インフラを整備しながら進軍し、港や橋も出来るだけ破壊しない状態で勝利するという考え。

ただ勝つだけじゃないんですよね。勝つのは前提で、その後で広義においてのオルクセン王国をどのように発展させていくかを見据えた作戦。戦争は目的じゃなくて自国を更に発展させる為の手段の一つである、と。

そんな中で、戦争の実戦が始まり兵士達が前線を駆け抜けている時も、終戦後の国の繁栄を考えている金融方の戦いが読んでいて本当に胸躍ります。兵站方、金融方など一見裏方のように見えてその実、国を支える大動脈となっている人達の静かなれど熱い戦いたるや。


そして戦闘の方ですが、120年に渡る用意周到な準備に基づいて圧倒的な快進撃をして終わるのかと思いきや違いました。基本的には快進撃なんですけどね。

ディネルースの生まれ故郷である村で繰り広げられた戦闘、その状況がもうね……。アンファングリア旅団一同の気持ちがディネルースを通じて染み出ているんです。そして、それを分かった上でのグスタフや他の仲間達の態度が。

ちょっと話は逸れますが、この作品の魅力の一つはグスタフの人柄、と言うか人たらしっぷりだと思います。それも言葉だけではなく、贈り物と手紙を通じて人の心を骨抜きにする生粋の人たらしっぷりが、良い意味でいやらしいな、と。こんなん惚れるわ。

そんな戦争の中において、比較的苦戦を強いられている海軍の重い空気を振り払ってくれる、通称『鉄屑戦隊』。彼らの牧歌的な雰囲気と温かみが物語の良い緩衝材となっている……と思っていた時もありました。

この物語、基本的にはグスタフの圧倒的な能力によって兵站を極限まで極めているから、戦闘は基本的に無双に近い状態ですが、そんな中において珍しい、圧倒的に不利な状況下での戦い。その孤軍奮闘はまるで普通の冒険譚を読んでいるかのようで、何と言うか不思議な感じでした。でもここが本当に熱かった。目頭も熱くなった。

2巻とはまた違った意味で楽しませてくれた3巻でした。これからは戦争を通じて、今まで描かれていなかったエルフィンド王国の内部事情が明らかになっていくとの事でとても楽しみ。

個人的にはグスタフとディネルースとの関係がとても気になるところなので、続巻で掘り下げられていると良いな、と。




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